プロジェクトストーリー

人のために、地域のために、社会のために。その想いが、企業再生のエネルギーに。

破綻した企業や業績不振企業の事業価値を再評価し再生を支援する企業再生ビジネス プロジェクトの現場で何が起き、何が原動力となって、人が、企業が動いたのか。 あるプロジェクトの記録を通じて、新生銀行が提供するソリューションの本質に迫った。

Phase1 チームで共有された使命感

この企業再生は「地域再生」につながっている

難しい案件になる。会社更生法の適用が申請された株式会社穴吹ハートレイ(以下、穴吹ハートレイ)のフィナンシャル・アドバイザー(以下、FA)候補として声がかかったとき、ソリューションアドバイザリー部の渡は瞬時にそう理解した。
高松市に本拠を置く大手マンションデベロッパー、株式会社穴吹工務店の子会社で、ゴルフ場やホテル、リゾートマンションを管理・運営する穴吹ハートレイ。もともと業績は厳しく、過大な借入金を負っていたところに、リーマンショック後の景気後退のあおりをうけて、これまで同社を支えてきた親会社の業績が急激に悪化、2009年11月、親会社と共に会社更生法の適用を申請していた。会社更生法が適用されると、裁判所が、倒産企業の財産を管理し債権者へ資産の公正な配当を担う管財人(通常は弁護士)を選任し、その管財人がFAを選定する。FAの役割は、破綻した企業の事業価値の再評価から再生スキームの策定、事業を継承する買い手(スポンサー)の選定、交渉、契約にいたるまで一連の戦略的アドバイザーを務めることである。主に銀行や証券会社が候補者となり、選考会を経て決定される。選考段階では、各FA候補先が提示する再生スキームの内容に大きな差がつかないケースも多く、最終的な選定には、過去の実績と業界での評判が大きくものをいう。
「2000年にチームが発足して以来、我々は多くの企業再生案件を手がけており、その実績が評価された。率直に嬉しいことでした。」と渡は語る。
もちろん、持ち込まれた案件すべてにFAとして名乗りを上げるわけではない。条件や採算性を検討し、引き受けることが難しいと判断するケースもある。しかし、今回は断るという選択肢はなかった、と渡は続ける。
「適正な収益を上げられるかというビジネスとしての勝算なくしてプロジェクトが始動することはありません。利幅が薄ければ引き受けないこともある。しかし、今回の最優先事項はそこではありませんでした。」
「穴吹ハートレイの各施設が地域住民の雇用という面で担っている役割の大きさ。多数の会員を持つゴルフ場やリゾートホテルの破綻による個人顧客の経済損失や、地域経済そのものへの影響。こうした面を考えたとき、穴吹ハートレイの事業再生は、社会的に意義のある案件であり、金融機関本来の使命でもあると思いました。」
その言葉に金井も頷く。
「倒産したホテルが廃墟となり、景観が荒廃する。訪れる人はさらに減少し、地域全体が寂れていく。地方の観光地においてそういった事例は決して珍しいものではありません。観光という屋台骨がぐらつき、地域経済がなし崩しに地盤沈下していくさまを、金融機関として座視するわけにはいかない、という意識がありました。」
早期の事業再建により地域を再生・活性化するために、この案件は成功させなければならない。難しい案件だからこそ、自分たちが手がけたい。自分たちならできる。そんな使命感をチーム全員が共有していた。

厳しい現実を冷静に受け止める

むろん使命感だけで企業を再生できるほど甘い世界ではない。
FAに選任された時点で、実はスポンサーの目処は全くたっていなかった。
スポンサー探しを始めるにあたってまず重要になったのは、どのような売却方法をとるかという判断だった。穴吹ハートレイの場合、展開する2つのゴルフ場については、収益も安定しており、抱えている多額の借金の処理さえできれば事業継続が可能と見込まれる一方、3つのリゾート施設、ホテルはそもそもビジネスモデルに問題があり、赤字規模も大きく、全事業を一括で継承するスポンサー企業はまず見つからないだろうと予想された。一括承継に拘り、仮にスポンサーが見つかっても買い叩かれて債権者への返済額が下がってしまうようなことは、FAとして避けなければならない。
「収益構造、採算性、需給環境などあらゆる条件が異なる5つの事業を売却するわけですから、基本的な戦略として、すべてを1スポンサーに一括売却するのではなく、施設ごとに個別のスポンサーを見つけるという方針を早期に決定しました。」
事業ごとに切り分けて売却するという手段については、傍から見ればいかに合理的でも、旧経営者側や従業員からの抵抗があったと渡は語る。もともと一つの企業である。経営者はもちろん、それぞれの施設で働いている従業員たちにしても、解体されて別の企業へ売却されることへの心理的な不安やショックは大きいだろう。厳しい現実を直視してもらうことは容易ではなかったが、「企業という容れ物を守るのではなく、今は破綻しかけているが本来、価値のあるそれぞれの“事業”を生き返らせ、存続させていくことが目的」であることを伝え続け、やがてその意識は関係者全員にも共有されていったという。
FA選任後の最初のアクションは、ただちに現場物件の視察に赴くことである。
足で、目で、耳で、さまざまなソースに当たって情報を集めていく。メンバー自身がその事業を一から徹底的に勉強するのである。財務諸表などの数値データはもちろん、外部環境や雇用状況、各種法律や規制など、ヒト、モノ、カネに絡むあらゆる情報を有機的に分析し、再生の可能性を探っていく。この案件の場合、調べれば調べるほど事業採算性を確保することの難しさが露呈された。プロジェクトメンバーの一人である安田は、「正直、引き受けてくれるスポンサーが見つからないのではないかと、一時は半信半疑になりました。」と率直に当時を振り返る。それでも引き受けた以上、成功させるという以外の結果はありえない。地域社会への貢献という使命感と、プロフェッショナルとしてのプライドを胸に、地道な検証・分析作業を重ねていった。

Phase2 スポンサー選定と説得の日々

ページトップ